地方自治体のアンテナショップ
地域産業の振興策のお手伝いをしている山形県長井市の長井銘産品研究会のみなさんが、東京の霞ヶ関にある山形県のアンテナショップ「ゆとり都」で即売会を開催した。 そのお手伝いにと、日ごろお世話になっている学生3名を送り込み、その現場監督(笑)に出かけてみた。
地方自治体によるアンテナショップは、今、東京都内で数多く見ることができる。出店の形態は色々で、東京事務所の一角に売店を設けるものや、第三セクターや公社の直営店、民間企業へ委託しているものなどだ。
有名なものには、独立採算制で東京以外にも出店し、定着している沖縄県の「わした」がある。折からの沖縄ブームの影響もあるのか、経営的にも安定しているようだ。 こんなところにと驚かされたのは、新宿南口の「新宿サザンテラス」に進出した宮崎県のアンテナショップ「新宿みやざき館 KONNE」。ここでは、ここでしか手に入らない現地直送の焼酎などがあり人気だそうだ。一階の飲食スペースは夕方になると、満席状態になっている。 宮崎県から東京に来た人と訪れたことがあるが、「地元でもなかなか手に入りにくいものまで揃っている」と感心していた。
「ゆとり都」で、訪れる客層を観察してみた。霞ヶ関という土地柄、スーツ姿のサラリーマンが多い。店内にソバ屋が併設されているためか、昼食のために訪れる人も多い。 意外と多いのは、始めから購入するものを決めて来店している人が多いことだ。店に入ると、売り場に直接、向い、そのまま、レジで支払いを済ませて、帰っていく。
中高年のご婦人も多い。こうした人たちは、一言二言、会話を楽しんでいく。何か、購入するものを決めて来店しているが、試食などをして気に入れば、多少、高額でも購入する傾向があるようだ。 一方、初老の男性客は、サラリーマンで出身が山形であったり、何かしら関わりがある人が多いようだ。彼らも、会話を楽しみ、気に入ったものを二、三品購入していく。
若い女性も、少なからずいた。夕方などに立ち寄って、購入していく。今、流行の「おひとりさま」だろうか。彼女たちは、色々と質問をするが、なかなか購入には繋がらない。
これらの客層を見ていると、こうした産直の店での販売で重要なのは接客であることが理解できる。「わした」のある店舗を訪れた時に、アルバイトの若い男性が詳しい商品知識があるのに感心すると、「ここでは、沖縄出身の学生がバイトしているからです」と少し照れた様子で返事をしてくれた。単に、ふるさとの産品を並べたら、懐かしがってくれて買ってもらえるというものではない。
そういえば、以前、大阪駅前の地下街の阪神百貨店に沿ったところに、各県の名産品を売る小さなは店が並んでいた。包み紙まで地元のものを使ってくれるため、「アリバイ横丁」と呼ばれていた。ここ十年ほどで、後継者がいなくなったり、売上が伸びなくなったり、あるいは今の状況にあわないとテナントが撤退を望んだりで、今ではすっかり店の数は減ってしまっている。しかし、これらの店で、旅先で美味しかったものなどを買い求めると、まるで現地のみやげものを買っているかの雰囲気がある。売り場のおばちゃんたちの話がおもしろいのだ。
「ゆとり都」を見ていると、確かに店はこぎれいにまとまっているし、商品揃えも充分だ。しかし、職員の人たちの接客は、少し・・と思ってしまった。特に不満があるわけではないが、なんというか「思い入れ」のようなものが欠けているように思えたのだ。
horse 地方自治体のアンテナショップは、単なる物販とは違うものを求めてお客たちもやってくる。そうした顧客の求めるもを提供できるかどうかが、成否を分けていくのではないだろうか。